チャーチル 不屈のリーダーシップ ~その2~

記事と同名の本の印象に残った個所をメモしていく。

陸軍士官学校を卒業したチャーチルは、戦場に赴くようになり、その体験を記事にして実績を積み上げていく。 1896年、22歳の時に赴任したインドでのこんなエピソードがある。

インドに赴任すると、行動する機会を探した。だが、機会が訪れるまでの時間も無駄にしない。自分が無知であることを自覚しており、重要な大著を送るよう母親に依頼した。母親は送ってくれた。インドでは軍隊の勤務は朝早く始まるが、気温が上がる昼間には長い休憩時間がある。ほとんどの将校は昼寝に使ったが、チャーチルは違っていた。読書に使ったのである。トマス・マコーリーの「イングランド史」とギボンの「ローマ帝国衰亡史」はむさぼり読んだ。また、ウィンウッド・リードの宗教批判書、「人類の殉教」を読み、生涯にわたって自由思想を信奉し、組織宗教を批判するようになった(ただし、外見上はつねに国教会の権威に従う姿勢をとり、無神論者のレッテルを張られて政治的に打撃を受けないようにした)。読む価値のある本は入手できればすべて読み、読んだものは忘れることがなかった。それでもつねに知識が不足していると感じており、必読書を進められれば必ず読んで、知識の穴を埋めようと努力した。 (p.24)

大変な読書家だったようだ。前回の記事で「ローマ帝国衰亡史」の語数とチャーチルの著作の語数を比較した箇所を取り上げた。「ローマ帝国衰亡史」が比較に出てきたのはこのエピソードの影響だろう。

「読んだものは忘れることがなかった」というのは一字一句覚えていたという意味ではないだろう。wikipediaによれば、

読書家でもあり、大きな蔵書を残した。チャーチルは「本を全部読むことができぬなら、どこでもいいから目にとまったところだけでも読め。また本は本棚に戻し、どこに入れたか覚えておけ。本の内容を知らずとも、その場所だけは覚えておくよう心掛けろ」という言葉を残している。 (出典は山上正太郎 『ウィンストン・チャーチル 二つの世界戦争』 誠文堂新光社、1960年(昭和35年))

とある。たとえ一部であっても、読んだ内容を頭に留める努力をしていたのだろう。

戦争の体験記が国内でも評判となり、勲章も手に入れたチャーチルは軍を除隊する。 1900年のいわゆる「カーキ選挙」でチャーチルは保守党候補として初当選を果たす。 チャーチルの政治家としてのキャリアが始まったのは26歳の時だった。

チャーチルと演説

政治家に演説は不可欠である。チャーチルも数々の名演説を残している。チャーチルの演説はどのように育まれたのか。
チャーチルの演説のスタイルを決定づける出来事が、議員になって4年ほどが過ぎた1904年に起こったらしい。

チャーチルは当初、予定された演説を行うときに注意深く準備したものの、一字一句まで決めておく方法はとっていなかった。ところが1904年、下院で演説していた時、最高潮に達したと思えたところで突然、つぎの言葉が出てこなくなるという大失態を演じた。その後は演説原稿を用意し、すべて暗記し、練習し、間合いを計算して、何事も偶然には任せないようにした。これに対して、ロイド・ジョージウェールズの説教師の伝統を受け継ぐ、聴衆を鼓舞するタイプの指導者である。その場で考え、即興で演説し、下院議員の拍手やヤジで議場が盛り上がり、それに刺激されて思いついた警句やジョーク、毒舌や格言を織り込んでいく方法をとる。(中略)ロイド・ジョージの演説が引き起こす興奮はすさまじかった。何を語るのかは事前には予想がつかない。驚かされることが少なくないし、演説している本人にとってすら、意外な内容になることがある。(中略)しかし、チャーチルのスタイルは本人に合ったものであり、やがて、もっと重々しい状況で全世界に向けて演説するようになったとき、極めて効果的であることが明らかになる。さらに、ロイド・ジョージの演説を印刷物で読むと、とくに良いとは思えないが、チャーチルの演説を印刷物で読むと、たいてい、本人の肉声が聞こえてくるように感じる。散文としての質も高い。 (p.51)

ロイド・ジョージはアスキス内閣のもとで大蔵大臣として老齢年金制度の成立(1908年)に携わった自由党の政治家である。この時チャーチルは保守党から自由党に移っており、通商大臣を務めていた。ロイド・ジョージはその後、首相として第一次世界大戦を迎えることになり、イギリスを勝利に導いていく。

ロイド・ジョージが即興の名人だったのは弁護士であることも影響しているだろう。一方、軍(むしろ従軍記者だが)出身のチャーチルは即興を得意とはしなかったようだ。映画でも、チャーチルは原稿を本番直前まで修正し、本番でも原稿が書かれたメモをある程度見ながら話していることがわかる。

プレゼンの名手と名高いスティーブ・ジョブズも、発表前には入念に原稿と資料を作りこみ、徹底的に練習したことが知られている。

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当たり前ではあるが、やはり練習は裏切らない。練習は退屈だが、チャーチルでさえ練習していたと思えば諦めもつくだろう。