チャーチル 不屈のリーダーシップ その4

いよいよ映画の題材となった、首相就任からの動きを見てみる。この記事で扱うのはやはり演説である。

チャーチルが演説を最大限に活用するようになったときに、ヒトラーは逆に演説を行わなくなったのは興味深い事実である。(中略) チャーチルが首相に就任した頃には、ヒトラーはいくつかの軍司令部、それもたいていは地下に作られた施設にこもるようになり、めったに姿を見せず、公の場での演説は全く行わなくなっている。ヒトラーは洞窟に隠れたわけだが、チャーチルは世界的な著名人になり、ナチスの検閲が及ばない地域ではどこでも、新聞や雑誌に頻繁に登場するようになった。

映画は、お手並み拝見とばかりにハリファックス卿とチェンバレンが演説の様子を見るシーンから始まる。

就任直後の1940年5月13日、下院でこう演説している。「閣僚に話したのと同じことを、下院の皆さんにも申し上げる。私が提供できるのは血と労苦と涙と汗、これら以外に何もない」。同じ演説で、自分の目的は単純明快だと語っている。「我が目的は何か。それは勝利である。いかなる犠牲を払っても勝利、いかなる恐怖に襲われても勝利、いかに遠く険しい道であっても勝利を収める。勝利なくしては、生き残ることができない」

原文はこうだ。

I would say to the House, as I said to those who have joined this government: “I have nothing to offer but blood, toil, tears and sweat.” (中略) You ask, what is our aim? I can answer in one word: It is victory, victory at all costs, victory in spite of all terror, victory, however long and hard the road may be; for without victory, there is no survival. Let that be realised; no survival for the British Empire, no survival for all that the British Empire has stood for, no survival for the urge and impulse of the ages, that mankind will move forward towards its goal. But I take up my task with buoyancy and hope. I feel sure that our cause will not be suffered to fail among men. At this time I feel entitled to claim the aid of all, and I say, “come then, let us go forward together with our united strength.” winstonchurchill.org www.youtube.com

この演説でチャーチルはまずまずの出だしを見せる。正直活舌は良くないのだが、victory~や、no suvival for ~ と同じ言い回しを繰り返すことで緊迫感とリズム感を出している。確かにやる気になるだろう。
また、映画のクライマックスの演説についてもこのように筆者は述べている。

特に印象に残る演説が2つある。ダンケルク作戦の後、ヨーロッパ大陸での敗北が最終段階に入る直前の6月4日、こう主張した。 われわれは決してひるまないし、屈しない。フランスで戦い、海で戦い、高まる自信と強まる力を持って空で戦う。いかなる犠牲を払おうともこの島を守る。われわれは水際で戦い、上陸地点で戦い、野で戦い、町で戦い、丘で戦う。われわれは決して降伏しない。 下院の演説ではこの人らしく小声で冗談を付け加えている。「武器はどうすると言うのなら、ピッチフォークと箒の柄で戦う」。冗談はいつも縁遠いものではなく、最悪の時期でもそうだった。もちろん国民はピッチフォークで戦う話を知らない。しかし、決して降伏しないと言う一節は心に響いた。国民はこの言葉を信じた。そして、決して強くしないと誓ったのだ。

原文はこうなっている。

Even though large tracts of Europe and many old and famous States have fallen or may fall into the grip of the Gestapo and all the odious apparatus of Nazi rule, we shall not flag or fail. We shall go on to the end, we shall fight in France, we shall fight on the seas and oceans, we shall fight with growing confidence and growing strength in the air, we shall defend our Island, whatever the cost may be, we shall fight on the beaches, we shall fight on the landing grounds, we shall fight in the fields and in the streets, we shall fight in the hills; we shall never surrender, and even if, which I do not for a moment believe, this Island or a large part of it were subjugated and starving, then our Empire beyond the seas, armed and guarded by the British Fleet, would carry on the struggle, until, in God’s good time, the New World, with all its power and might, steps forth to the rescue and the liberation of the old. winstonchurchill.org www.youtube.com

ちょうど今日で78年になる。今度はwe shall を繰り返している。実にイギリスらしい。ダンケルクでは30万人を超える兵がボロボロになりながら撤退している最中であり、こんなロマンチックなことを言っている場合ではないのだが(もちろんチャーチルはそのことを十分承知している)、このような演説をしたチャーチルの度胸には感服させられる。
名演説はまだある。

フランスが降伏した後、やはり記憶に残る名文句を残している。「されば、決意を固めて、それぞれの勤めを遂行し、大英帝国と英連邦が1000年続くとしても、これこそ最も輝かしい時だったと語り継がれるようにしようではないか」人々はこの言葉を信じた。イギリス国民だけではない。演説はヨーロッパ大陸にも流れ、命を脅かされながら聞いた人たちもこの言葉を信じた。

これは6月14日になされた演説である。

Let us therefore brace ourselves to our duties, and so bear ourselves that, if the British Empire and its Commonwealth last for a thousand years, men will still say, “This was their finest hour.” winstonchurchill.org www.youtube.com

状況が悪い時には、そんな気にはなれなくとも「まずは元気を出せ」というのが解決策の一つなのだが(必要以上に暗くなると、そのために失敗を繰り返すことになる)、チャーチルは自分でそれができるだけでなく、周りにも元気を出させる才能を持っていたようだ。

次の演説も個人的には気に入った。

1941年10月29日、母校のハロー校を訪れて、若者たちを前に熱烈の演説を行っている。 暗い日々だと語るのはやめよう。厳しい日々だと言おう。今は暗い日々ではない。左の日々、我々の国にとって良いかつてないほど偉大な日々なのだ。われわれは皆、神に感謝しなければならない。一人一人がそれぞれの持ち場で、この日々をわが民族の歴史で長く記憶されるようにする動きへ参加するのを許されているのだから。

Do not let us speak of darker days: let us speak rather of sterner days. These are not dark days; these are great days – the greatest days our country has ever lived; and we must all thank God that we have been allowed, each of us according to our stations, to play a part in making these days memorable in the history of our race. winstonchurchill.org www.youtube.com