友達作りにヒトの生態を見る『友だち作りの科学』 その3 会話を始めるステップ
前回の記事は会話の内容について触れた。
今回の記事は会話に入るまでの動きを扱う。
まずは一対一の会話を始めるまでのステップを、次にグループ内での会話に入るステップについて書く。
会話を始めるといっても色々考えられる。ここではお互いにあまりよく知らない誰かとの会話の始め方について考える。
例えば、学年が変わって新しいクラスになったときなどである。
個別の会話を始めるステップ
『友だち作りの科学』によれば、以下のステップを踏むとよいらしい。
- 何気なくその人を見る
- 小道具を使う(持ち物や、その人が今していることにコメントする)
- 共通の趣味を探す
- 共通の趣味について話す
- 共通の趣味について情報交換する
- 相手の興味を見極める
- 自己紹介する
自己紹介は最後にするというのが興味深い。
共通の話題があれば、後になって自己紹介は自然と必要になるというのだ。
相手の興味を見極めるには、次の反応を見るとよいという。
相手の興味を見極める
- 話題が広がっているか
- 体をこちらに向けているか
- アイコンタクトをするか・顔を合わせるか
逆に言えば、これらの反応をこちらも返さなければ相手に興味がないと感じさせかねない。
グループの会話に入るステップ
続いてグループの会話について考える。
基本的には一対一と同じである。
- 会話を注意深く聞く
- 少し離れたところで目立たないように見る
- 小道具を使う
- 会話の話題を捉える。馴染みのない話題なら入らない方が無難。
- 話題について共通の趣味を持っていることを確認する
- 少しだけ多くアイコンタクトをとる(4~5秒)
- グループに近づく
- 会話における短い間を待つ(会話を中断しない)
- 話題についてコメントをするか質問をする
- 自分への関心を見極める
- 自己紹介をする
一対一と異なるのは、すでに話がなされているところに入っていく点だ。
そのため、話題を捉えたり、話に入る間を待つといったことが必要になる。
会話に留まるべきか立ち去るべきか
会話を始めるのと同じくらい、会話を終わらせるのも大事だ。
よく知らない人の中に入ろうとした時、その約50%が何らかの形で拒否されているという。
これは誰にでも*1起こる可能性がある。
そのようなグループの人たちは自分たちだけで話をしたいと思っている。
それはグループの問題であり、あなたの問題ではない。
問題があるとすれば、受け入れられていないことに気づかずに居座ることだ。
言語的な手がかり
次の条件が満たされないのであれば、潔く立ち去るほうがよいという。
- 話題はあなたの知っていることか
- 互いにやりとりしながら話をしているか
- あなたに対して心地よく話しているか
- あなたの質問やコメントに対して話題が続いていくか
- ボディランゲージ
- 会話に加わっている人に体を向けているか、見ているか
- グループの輪を開いているか
- アイコンタクトをするか
会話から抜けるためのステップ
- 落ち着きを保つこと
- ゆっくりと視線をそらす
- ゆっくりと体の向きを変える
- ゆっくりと何気なく立ち去る
受け入れられないことにあなたは傷つくかもしれないが、相手も悪意があってそのような態度を取っているとは限らない。
たまたまその日の相手の都合が悪かったのかもしれない。
悪意があってそのような接し方をしていたのであれば、そんな相手と付き合う必要はなおさらない。
どちらにしても、動揺を見せないこと。そこで癇癪を起こしてもあなたの得にはならない。
最初は受け入れられ、後に会話から締め出されたと感じる時に会話から抜けるステップ
こんなケースがあるのかわからないが、本に載っているので紹介する。
- 会話が途切れる瞬間を待つ
- 立ち去るためのカバーストーリーを話す
- 立ち去る
カバーストーリーとは、会話から抜けてその場を立ち去らなければならない簡単な理由である。
本当のことでもよいし、ちょっとした言い訳でもよい。
どちらにしても、会話に入っていたのに、何も言わずにその場を離れていってしまうと奇妙に見えるという。
そのため、何らかの形で立ち去ることを知らせることが大切だ。
カバーストーリーは短いものでよく、「もう行かないと」、「授業に行かなくちゃ」などがあるという。
ウソでも構わないというのが現実的である。
個人的には、ソーシャルスキルの本質は「噓も方便」ではないかと思っている。
仮に発言内容が真実でなかったり、本心でなくとも、そう言っておくことで丸く収まる場合があるということだ。
もちろん常に本心から発言できればそれに越したことはないが、なかなかそうはいかない。
逆に、相手の発言も文字通り受け取らず、ある程度差し引いたり、口実づくりだと察することができるのが理想だ。
カバーストーリーはその一例といえるだろう*2。
十分に受け入れられていると感じる時に会話から抜けるためのステップ
会話が盛り上がっていても、話を切り上げなければならないこともある。
- 会話が途切れる瞬間を待つ
- カバーストーリーを話す
- また会おうね、あるいはまた後で話そうと言う
- 別れの挨拶を伝える
- 立ち去る
また会おうという言葉が出る相手と会えたことを寿ごう。
友だち作りの科学―社会性に課題のある思春期・青年期のためのSSTガイドブック
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