友達作りにヒトの生態を見る『友だち作りの科学』 その4 よいスポーツマンシップを見せること

『友だち作りの科学』では、スポーツマンシップを理解することが友人との関係を作るのに重要だとしている。

スポーツマンシップという言葉は選手宣誓で聞く単語だ。小、中、高とサッカーをやっていたが、それが何かについては教わることがなかったように思える。

部活の顧問もスポーツマンシップを持ち合わせているようには見えなかった*1

そもそも、スポーツマンシップとは何なのか。

スポーツマンシップの軸

スポーツマンシップの原則は次の3つだという。これは運動にかかわらず、ゲームなど何かしらの勝負全般に言えることだ。

  • 仲間意識:誰もが楽しい時を過ごす(勝利が目的ではない)
  • 公正な行動:道徳的に正しくみんなで公平に遊ぶ
  • セルフコントロール:自分の感情や行動をコントロールする

これらの原則を満たすため、特に親しくない相手とスポーツをするときには、次の行動を取る、もしくは取らないよう心掛けると良いという。

  • 他者を褒めること
  • ルールに従ってプレイすること
  • 共有することと交代すること 独り占めをしない
  • 審判をしない
  • コーチをしない
  • 強い競争心を持たない(楽しむこと、友人関係を続けること)
  • 誰かが傷ついている(物理的、精神的に)時は気遣いを示し手助けをする
  • 退屈な時には活動を変えることを提案する(「退屈だ」とは言わない)
  • 負け惜しみ(負けを認めないこと)を言わない
  • 嫌な勝者にならない(調子に乗りすぎない、煽らない)
  • ゲームが終わったら「いいゲームだったね」と言う

当たり前といえば当たり前だが、これらを守らない人がいると確かに不愉快になる。

個人的に興味深いのは、審判やコーチをするのはあまりよくないということだ。

あくまでも楽しむことが目的であり、厳密さや正しさはある程度犠牲にすることが大事だということだろう*2

どこまで正しさを求めるかは人によるため、その範囲が合う人と付き合うとよい。

また、負けを素直に認めることも大事だという。

そこでの勝ち負けはその後の関係の上下を決めるものではない。

勝ったからといって調子に乗るのは論外だが、負けたからといって卑屈になる必要もない。

相手のプレーを認める

勝つにしても負けるにしても、相手のプレーを認めることが大事らしい。

  • やったね
  • 惜しい
  • ナイスショット
  • うまい
  • ナイスプレー
  • イケてるよ
  • ハイタッチ
  • 拳でタッチ
  • 手を握って親指を立てる
  • 拍手
  • 握手
  • 背中をポンと叩く

などが相手のプレーを認める言動の代表である。

最後に

4つの記事にわたって、友達づくりについて書いてきた。

記事に書いたもの以外にも、たとえば友人を部屋に招待するときの動き方や、メールでのやり取り、噂話への対応など多くのトピックが扱われていて面白かった。

それぞれの話題について、問題を抱えていた子どもがそれを克服していく実例が示されている。

それはヒトという動物が、群れになじんでいく過程を見るドキュメンタリーのようで感動的だ。

この本はソーシャルスキルに悩みを持つ子どもと、その親向けに書かれたものだが、大人が読んでも十分参考になる。

このような方法論が確立されているのはさすがアメリカといった感じだが、それだけ悩む人も多いということだろう。

もちろん、アメリカで開発された方法が日本でもそのまま適用できるとは限らない。

ただ、これまで見てきた内容はかなり日本でも成立すると感じる。

ヒトがどんな行動をする他人を仲間だとみなし、また敵だとみなすのかについて、この本は一つの答えを与えてくれるように思う。

友だち作りの科学―社会性に課題のある思春期・青年期のためのSSTガイドブック

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*1:今だったらパワハラ扱いされるような言動が多かった

*2:強豪校はまた違うのだろうが