懸垂ができない人間ができないなりにスパルタンレースのモンキーバーとマルチリグの攻略法を考える

スパルタンレースの障害物の中で特に難しいと感じるのはモンキーバーとマルチリグである。

これまでに2回スパルタンレースに参加したことがあるのだが、他の障害物は気合でなんとかなっても、この2つは手も足も出なかった。

というわけで、来る7/6の大会に向けて、モンキーバーとマルチリグの攻略方法について考える。

断っておくと、これから書く方法で攻略できたわけではない。おそらくこれで攻略できる(少なくとも改善はする)と考えたため、それに従ってトレーニングをしていくつもりだという決意表明である。

目次

結論

  • 攻略に必要なのは腕力というよりも握力(もちろん腕力があるに越したことはない)
  • 握力は体重の半分程度を30秒~1分出力し続ける必要がある
  • 手袋の助けを借りるとよい

タイトルにもあるように、私はこの記事を書いている段階では懸垂ができない。

ただ、懸垂ができないからといって全く歯が立たないということはないだろう、というのがこの記事の趣旨である。

もちろん懸垂ができれば余裕をもってクリアできるようになるとは思うが、エンジョイ勢としてはなかなか難しいものがある。

スパルタンレースとは?

スパルタンレースはアメリカ発祥の本格的な障害物レースである。

日本でも年に数回開催されている。

www.youtube.com

spartanracejapan.info

階級が複数あり、比較的容易なSPRINTは約5kmのコースに障害物が20個、上級者向けのSUPERは約13kmのコースに障害物が25個ほど配置されている。

障害物をクリアしつつ、ゴールまでのタイムを競う。

モンキーバーとマルチリグは障害物の1種である。

モンキーバー・マルチリグはどんな種目?

動画を見てほしい。要は雲梯であり、使う体の部位や動きは似ている。

www.youtube.com

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使うのは基本的に手と腕である。まずぶら下がること、そしてその状態から次のバーやリングに移動することを繰り返していく。

ぶら下がる・次のバーに移動するとはどういうこと?

まず、「ぶら下がっている」という状態について考えてみる。

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摩擦力と重力の綱引き

あまりに当たり前すぎて言うのもはばかられるが、「ぶら下がっている」ということは手と棒の間の摩擦力と重力が釣り合っているということだ。

摩擦力が重力より小さければ下に落ちる。

摩擦力は接触面に垂直な方向の力と摩擦係数の積で表される*1

f = \mu N

垂直方向の力は握力である。ぶら下がるために必要なのは握力であり、腕力ではない*2

摩擦係数は現時点ではなんともいえない。ただ、1より大きければぶら下がるために必要な握力は体重以下となり、1より小さければ体重以上の握力が必要になりそうだということはわかる。

さらに、バーからバーへ移り変わる際には瞬間的に片手だけで全体重を支えることになる。

どのくらいの力が必要?

移動ではなくぶら下がる状態を考えると、使うのは両手であるため、それぞれが体重の半分を支えればよい。

また、人の皮膚の摩擦係数は1.0~2.5程度であるらしい*3*4。バーの状態にもよるが、話を単純にするために摩擦係数は1とする。

すると、握力は体重の半分は出せなければぶら下がることすらできない。

動画を見ると、スムーズに進んだ場合でも移動には30秒~1分程度かかる。最低でも体重の半分の握力をこの時間出し続ける必要がある。

さらに、次のバーへ移る際には片手だけが棒に触れるため、一瞬だけでも全体重の分の握力を出せることが望ましい。

摩擦係数を上げればより少ない握力でよさそうである。これについては後述する。

レーニン
成人男性であれば、体重が100kg超というような人でもない限り、体重の半分の握力を出せない人は少ないだろう*5

仮に出せなかったとしても、ハンドグリップを使えば数週間で出せるようになるはずだ。ドンキやAmazonで売っている。

(少なくとも私にとって)問題となるのは持久力のほうだ。

これを解決するため、ひとまず何も持たずに手を握って1秒キープし、手を開く、というトレーニングを1セット50回、1日3セットすることにした。

これは毎日やっている。

次に、ぶら下がるトレーニングをする。

近所に自分の身長より高い鉄棒があればそれでよいし、なければブランコを薦める。

ぶら下がった状態で30秒キープする。初めはできないため、10秒からはじめて時間を延ばしていく。これを3セットやる。

できれば、ぶら下がった状態で片手を離す。また、ぶら下がった状態で前後に体を揺らしてみる。

ぶら下がれただけではクリアは遠い。次のバーからバーへと移るという動きは実際にやらなければ身につかない。

Googleで「地名 雲梯」と検索したところ雲梯がある公園が出てきたため、そこで練習することにした。

また、攻略動画では移動の際に腕が伸び切っておらず、腕が曲がっていることがわかる。これは腕や肩の筋肉で体を支えていることを意味している。

私は懸垂ができないため、攻略動画のような動きは到底できないが、一応腕力も鍛えることにした。

いわゆるインバーテッドロウだ。

bukiya.net

公園でのトレーニングは週2~3回程度やっている。

雲梯はモンキーバー対策にはなっても、マルチリグの対策になるとは限らない。

ただ、マルチリグの練習ができるところは身の回りにはないため、今回はトレーニングしない。

摩擦係数を変える ~道具による補助~

スパルタンレースでは泥の中をほふく前進したり、泥まみれのジャングルジムのようなものを登ったりするため、グローブがあると楽になる。

モンキーバーやマルチリグでも、棒が冷たかったり汚れているとやりにくいため、手袋をつけて取り組むことになるだろう。

したがって、考えるべきはヒトの皮膚ではなくグローブの摩擦係数ということになる。

安価なものとして軍手が考えられる。実際、私は前回のレースで軍手を着用した。

ただ、軍手は摩擦係数が小さく、素手よりもすべりやすい。

代案として作業用のゴム手袋がある。ダイソーやワークマンで売っている。

item.rakuten.co.jp

天然ゴムの摩擦係数は1以上らしい。私はダイソーのものを使っているが、確かに素手と変わらないかそれ以上に楽にぶら下がれる。

www.toishi.info

さらに、摩擦係数を1.2とすれば、必要となる握力の最大値は体重70kgの場合、約58.3kgとなる。

まとめ

手袋は安いので、適当に買って試してみると良いと思う。

*1:もちろんこれは点接触の場合の話であり、面で接触する場合は一概に言えない

*2:腕が曲がった状態なら話は別

*3:嶋田明広, 韓鉉庸, & 川村貞夫. (1996). 人間の手指の摩擦特性の解析. 計測自動制御学会論文集, 32(12), 1581-1587.

*4:鈴木健太, 渡邉鉄也, & 田中基八郎. (2008). 指先の摩擦モデルに関する研究. 日本機械学会論文集 C 編, 74(746), 2549-2554.

*5:100kg超の人はまず痩せる方が先かもしれない