10代の新入生に薦める『武器としての決断思考』

大学生のうちに身につけて損はないと思うのは、意思決定の方法である。

ここでいう意思決定とは企業をはじめとする社会人のそれを指す。

すなわち、消費者ではなく生産者としての意思決定の方法である。

大学を卒業すればたいていの場合は社会に出て働き始める。その現場でどのような意思決定がされているか、またそれは妥当なのかを客観的に判断するためには一定の基準が必要となるだろう。

この本はその基準となる本である。

 

武器としての決断思考 (星海社新書)

武器としての決断思考 (星海社新書)

 

とはいえ、内容はよくあるディベートのノウハウである。大きく

  • 問いの立て方
  • 争点の洗い出し
  • 意見の立て方
  • 議論の進め方
  • 情報の集め方
  • 最終的な決定の仕方

に分けることができるだろう。

わざわざこの本を買わなくても、もっと深く、詳しい内容を知りたければ他に本がある。例えば、ディベートに関して言えば

は『決断思考』では扱っていない詭弁やダブルバインドへの対策を示している。また、ディベートにとどまらず社会学的な議論の進め方、問いの立て方を示している

知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社+α文庫)

知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社+α文庫)

 

がある。さらに、『決断思考』で扱われている内容を始めに紹介し、それを使って経済学に踏み込んだ

経済学思考の技術 ― 論理・経済理論・データを使って考える

経済学思考の技術 ― 論理・経済理論・データを使って考える

 

が挙げられる。

これらの本を消化していれば、『決断思考』を読む必要はない。

しかしながら、『決断思考』にあってこれらの本にはないのは、説明の丁寧さである。エントリのタイトルを「新入生に薦める」としたのはこのためである。

『決断思考』は具体例が豊富であるし、主観ではあるがかなりかみ砕いて書いてある(少なくとも上で紹介した3冊に比べれば)。

 

大学に入学していきなり『知的複眼思考法』や『経済学思考の技術』を手に取るのも悪くはないだろうが、私は持て余した。書かれていることは納得できるのだが、言うは易く行うは難しという感じで、実行に移すのが容易ではない。

 

その点『決断思考』は具体的な手の動かし方まで書かれているため、とっつきやすかった。私が知らなかったのは3時間目のメリットとデメリットの3条件である。

ディベートをする際には選択肢のメリットとデメリットを比較する。そのためメリットとデメリットの双方を考える必要がある。

メリットが成立するには、以下の3条件が必要になるという。

  1. 内因性(何らかの問題があること)
  2. 重要性(その問題が深刻であること)
  3. 解決性(問題がその行動によって解決すること)

また、デメリットが成立するには、以下の3条件が必要になるらしい。

  1. 発生過程(論題の行動をとった時に、新たな問題が発生する過程)
  2. 深刻性(その問題が深刻であること)
  3. 固有性(現状ではそのような問題が生じていないこと)

単語こそ違うが、メリットとデメリットは対になっている。発生過程は解決性の逆だし、重要性と深刻性は同じことを言っている。固有性も内因性の逆である。

相手に反論する際には、この3つの点に着目して意見を組み立てていくとよいらしい。

 

ここで私は知的複眼思考法の第2章のステップ2「違う前提に立って批判する」の着眼点がようやく理解できた。ここで挙げられている例は納得はできるものの、どう真似をすればよいのか分からなかったのだ。

この部分では、「近頃の若い男性はふがいない。これは教育のせいだ」という文章に異なる立場(前提)からの反論を試みている。例として次の立場が挙げられている。

  • 若い男性の立場
  • 女性の立場
  • 教育関係者
  • 会社経営者

私は初見の時に、反論しようにもどうしたものかとうだうだ考えてしまったのだが、『決断思考』であげたメリットの考えから言えば、

  • 若い男性の立場→内因性への反論
  • 女性の立場→重要性への反論
  • 教育関係者→解決性への反論
  • 会社経営者→解決性への反論

であると整理でき、腑に落ちた(具体的にどんな反論だったのかは読んで確かめてほしい)。

このように、『武器としての決断思考』を知っておけば、上にあげた3冊で行き詰った際にヒントが得られるかもしれない。

エピソードトーク

全ての女性に当てはまるわけでもないのだろうけれど、女性は実にエピソードトークが上手いと思う。具体的には、「今日こんなことがあって」という風に始まる話だ。

何があったのか詳しいところまで再現しながら話を進めていく。聞いていてもよくそんな細かいところまで覚えているなあと感じることが多い。これはどうも頭のなかで内容を構成しているわけではなく、即興で話しているらしい。


一方私はどうもそんな技能を持ち合わせてはいないらしく、私がエピソードトークをすると大抵冗長になり、話していても面白くないし聞いている方も面白そうには見えない。こうして私は即興の才能がないことを悟った。しかし会話もできない問題は残る。必要なのは準備だ。鉄板ネタというやつだ。この時私は気がついた。私はその日何があったかを人に話そうとも思っていなかったのである。そもそも人への興味が薄いのである。いささか反社会的だが仕方がない。

 

 

例のこれである。

才能がないなら技術と準備で補うというのが基本的な対策である。

コミュニケーションには「聞く」と「話す」の2つがある。今問題となっているのは「話す」方である。話す技術を向上させるには、話すか書くしかない。

そこで私は日記をつけ始めた。その日何があったかを整理しておくためである。日記は一日の終わりに書くようにしたのだが、筆が進まない。一日の終わりともなるとなにも覚えていないのである。
こうして私は日記ではなく、思い付いたらその場でメモをとるようになった。
やってみると、本一冊どころか本の一章でも人に話すネタにするのは難しい。特に情報の選択が困難だ。自分が面白いと思うところをまとめるのか、まずはあらすじをまとめるのか。結構な作業になり頭も使う。

少しずつではあるが、練習を積んでいこうと思う。

NDC(日本十進分類表)の覚え方 ~その2~

続いて要目表(1の位)についてまとめる。

前のエントリでも述べたが、数が多いので全て覚える必要はないと思う。

そのため私は41の数学、42の物理、53の機械工学・原子力工学、81の日本語、91の日本文学だけを覚えている。これはよく目にする分野であるためである。必要があれば他の項目も覚えていくつもりである。

例えば機械工学・原子力工学はこうなっている。

  • 530 機械工学
    • 531 機械力学・材料・設計
    • 532 機械工作、工作機械
    • 533 熱機関、熱工学
    • 534 流体機械、流体工学
    • 535 精密機器、光学機器
    • 536 運輸工学、車両、運搬機械
    • 537 自動車工学
    • 538 航空工学、宇宙工学
  • 539 原子力工学

これまでと同様、初めに基本的なものがあり、数字が大きくなるにつれて応用に近づき、複雑化していく。

次に、日本語である。

810 日本語

まず文字があり、それが意味を持つようになり、辞典になる。813の辞典は03が百科事典であることに対応している。

文法がなければ作文ができない。作文ができなければそれを解釈することもできない、という流れだろうか。

この順番は他の言語でも同じである。

 

NDCを見るだけでその分野の成り立ちが大まかに見積もれるため便利である。また、これらは一応MECEになっている(1冊の本には番号が1つしか割り当てられない)ため、フレームワークとしても扱える。

例えば、ロボットについて考える必要がある時には、まずロボットと各類を対応させることが考えられる(ロボット×哲学、ロボット×歴史、ロボット×社会科学…)。

さらに詳しく考えたければ、綱目まで広げればよい(ロボット×心理学、ロボット×政治、ロボット×機械工学、ロボット×農業…)。これらを1つずつつぶしていくことで分野の見落としを防ぐことができる。

また、自分の研究や業務がどの分野(番号)に対応するかを意識すれば、視野が狭くなるのを防ぐことができるだろう。

私は材料力学専門なのだが、530番台だけでなく、560番(金属・鉱山工学)台にも研究分野に関連するものがあることに気づいた。

このような図書館の利用方法は今まであまりしてこなかったので、これから意識していきたい。